464回 主宰選
(12月15日更新)
特選
草原の風にそよげる野紺菊 原田千寿子
野紺菊島に空き家の一つ増ゆ 小澤 巖
慈眼寺に俳句ポストや冬ぬくし 角野 京子
野路菊の揺るる城趾や昼深し 榎原 洋子
行く秋や油抜かるる耕運機 小澤 巖
ゆく秋や叶への杉を篤と撫で 藤田 壽穂
行く秋や言ふともなしに独り言 田中よりこ
はんなりと話す媼や冬ぬくし 中川 晴美
鉄棒にぶらと勤労感謝の日 西岡みきを
砂時計返す小春のテイタイム 榎原 洋子
入選
道の辺の小風諾ふ野菊かな 藤田 壽穂
砥部焼の土瓶に活くる野紺菊 上西美枝子
黎明に目を見はるごと野菊咲く 島津 康弘
行く秋やゆとりなき日を重ねきて 榎原 洋子
行く秋の雨に靄立つ信貴の山 瀧下しげり
吹く風に秋の名残の葉が揺るる 渡邉 房子
野菊手にタラップのぼる少女かな 山下 之久
野紺菊代の替はりし尼の寺 春名あけみ
野紺菊山の上なる水族館 田中よりこ
卓上に野菊一輪峠茶屋 浜野 明美
曇天の屋根に雨音野紺菊 日澤 信行
野仏に楚楚と揺れゐる野菊かな 谷野由紀子
紺菊を供花に足しゐる母忌日 中川 晴美
尼寺へ辿る道なり野菊咲く 瀧下しげり
街騒にひそと揺れゐる野菊かな 伊藤 月江
甦る初恋の日や野紺菊 住田うしほ
行く秋やただ念仏と説く住持 五味 和代
行く秋の吟詠響く宴かな 上西美枝子
行く秋の虹の松原波し吹く 原田千寿子
行く秋のともしに開く句会報 今村 雅史
コーヒーの御代り頼む秋の末 木村てる代
行く秋や人づてに聞く友のこと 伊藤 月江
行く秋や絹糸も切れぬ糸切歯 浜野 明美
自転車の錆や汚れや秋の果 星私 虎亮
行く秋や迷ひながらも蔵書棄つ 山内 英子
風さやぐ曲輪の跡や秋の末 板倉 年江
行く秋の風の穏けき鞍馬寺 大塚 章子
行く秋や色の褪せたる旅鞄 うすい明笛
入相の鐘もかすかに末の秋 山下 之久
山峡に柿の巨木や残る秋 三澤 福泉
落花生炒るや土産の五粒ほど 中村 克久
色の良き初生り柿を供へたり 金子 良子
やはらかき京の時雨を歩きけり 谷野由紀子
どの国も国歌貴し菊ひらく 今村 雅史
三代の合唱響く文化祭 山内 英子
コスモスの広がる先に日本海 うすい明笛
もふもふの赤きコキアや冬ぬくし 田中よりこ
柘榴落ち数多の粒が日を弾く 小澤 巖
人並みの覚悟無きまま冬に入る 関口 ふじ
行く秋や地蔵の当て子色褪せて 伊藤 月江
窓を打つ闇夜の風の冬めける 斎藤 摂子
秀吉の名護屋城跡神渡し 原田千寿子
生駒嶺をあふぎ白湯のむ今朝の冬 上西美枝子
小春日や逞しき背の四天王 瀧下しげり
歳時記繰る小春日和の空眺め 藤田 壽穂
潮流の匂ふ河口の浮寝鳥 春名あけみ
野菊咲く道を一駅歩きけり 角野 京子
椎の実を踏みしめ歩む参詣路 住田うしほ
佳作
野紺菊小くまぎれて咲きにけり 金子 良子
魅するのは紫色の野菊なり 斎藤 摂子
行く道のあちらこちらに野菊咲く 大野 照幸
隧道を抜けて野菊の景となり 山内 英子
吾子眠る茣蓙を囲める野紺菊 うすい明笛
群れ咲くやわけて野菊の色やさし 五味 和代
薬売り通りし道や野菊咲く 今村 雅史
畑の隅で遊ぶ子の持つ野紺菊 渡邉 房子
行く秋の心に沁むる薬草茶 角野 京子
行く秋や須田の絵に会ふ美術館 金子 良子
行く秋やチャペルの音の漁師村 島津 康弘
龍吼に秋の名残の手を打ちぬ 中川 晴美
野を駆くる仔馬の足も秋の果て 春名あけみ
咳こんで激しく歪む顔となる 斎藤 摂子
地平まで夕映ゆる空秋の果 住田うしほ
生きるとは味はふ事と野菊道 関口 ふじ
葭原は安寧の場所鴨来る 五味 和代
長き夜や書き留めし句の整理など 大塚 章子
山路来て墓に千振多に咲く 板倉 年江
仕上げにとストール巻きてお粧しす 渡邉 房子
名も知らぬ小さき寺に萩こぼれ 浜野 明美
続けたき孫との遊び小六月 大野 照幸
苔むして基盤寂びゐる秋深し 木村てる代
感想と添削
原句 山路行き地蔵に供す野紺菊
感想 供す、終止形にて切れてしまいます。行き、供すの関係も要一考
添削 野地蔵の供花のごとくに野紺菊 大塚 章子
原句 寂聴の法話聞き入る秋の果
感想 聞き入るであれば「法話に」。単に聞くのであれば「聞きゐる」
添削 寂聴の法話聞きゐる秋の宵 関口 ふじ
原句 荒々しきゴッホの描く秋の雲
感想 ゴッホが荒々しくなります。絵が荒々しいのであれば
添削 荒々しくゴッホの描く秋の雲 中村 克久
原句 野紺菊不要となりし登り窯
感想 中七要一考です
添削 野紺菊今は使はぬ登り窯 木村てる代
原句 比丘尼寺早や咲きそむる野紺菊
感想 上五、切らずにつなげたほうがなだらかになります
添削 尼寺に早咲きそむる野紺菊 西岡みきを
原句 鰯雲「野菊の墓」の文学碑
感想 「 」は旧かな時代の日本語にはありませんでした
添削 鰯雲野菊の墓の文学碑 三澤 福泉
原句 夕映えの陽を満々と野紺菊
感想 とは連用格。満々とどうしているのか分かりません。
添削 夕映ゆる日差しの中の野紺菊 星私 虎亮
原句 行く秋のおばしまに身を任せけり
感想 原句も可。ただ任すよりも委ね(ゆだね)の方が……
添削 行く秋のおばしまに身をゆだねたり 谷野由紀子
原句 野菊供へ親しき友の墓洗う
感想 季重りになりました
添削 野紺菊抱へて友の墓を訪ふ 中村 克久
原句 白き帯山に現る秋の末
感想 白き帯。山に現る。秋の末。 三段切れになりました。
添削 山ははや白く化粧へる秋の末 日澤 信行
原句 行く秋の高原野菜の柔らかさ
感想 ここは柔らかし と感じたことを直接表現します
添削 行く秋の高原野菜柔らかし 大野 照幸
原句 行く秋や妻と大目にもとほりぬ
感想 多目の誤変換でしょうか。ただ比較の対象が分かりませんので
添削 行く秋の野道を妻ともとほりぬ 西岡みきを
原句 散策の我を追い越す赤マフラー
感想 追い→追ひ となります。
添削 散策の吾を越しゆける赤マフラー 山下 之久
原句 草刈りて畑に盛れば秋の雲
感想 草刈 季重りになりました
添削 畑隅に盛りたる草や秋の雲 島津 康弘
原句 立冬の風満身を通り抜け
感想 抜け、連用形ですがここは終止形で
添削 立冬の風満身を通り抜く 星私 虎亮
原句 露時雨色づき荒るる河川敷
感想 綺麗な景色として詠んだ方がいい場面です。美しく→いしく
添削 露時雨美しくいろづく河川敷 日澤 信行
原句 ふわふわと児の言ふ布団冬に入る
感想 ふはふは。 布団・冬季重りになりました
添削 ふはふはと言ひ子が遊ぶ蒲団かな 三澤 福泉