シリウス宇宙句会 選評

 

 457回  主宰選

(5月15日更新)

  特選

帰る鳥一線やがて点となり          浜野 明美
鳥帰る翼に夢をふくらませ          中川 晴美
明け空を伸びて縮みて鳥帰る         小澤  巖
小流に摘むクレソンの一握り         瀧下しげり
クレソンや離島の庵に住みなるる       島津 康弘
句碑の立つ庭に小流れみずがらし→みづがらし 五味 和代
琺瑯のバットに川菜盛られをり        山内 英子
春の湖ゆつくりすすむ帆前船         田中よりこ
上弦を時折隠す春の雲            板倉 年江
十石舟に揺られゆられて花惜しむ       中川 晴美
島ひとつ丸ごと包む黄砂かな         春名あけみ
鳥声に葉音に佐保の春惜しむ         谷野由紀子
能楽堂に居合の剣舞風光る          原田千寿子
花万朶大仏駅の跡地にも           藤田 壽穂

  入選

日を浴ぶる木々の騒めき鳥帰る        板倉 年江
騒めける松の林や鳥帰る           原田千寿子
鳥帰る年度始めの手帳買ふ          山内 英子
鳥帰る帰港の船の大漁旗           中村 克久
夕景を満身に浴び鳥帰る           星私 虎亮
父母のなき故郷や鳥帰る           うすい明笛
縦になり横に並びつ鳥帰る          田中よりこ
災禍の地を何も無きかに鳥帰る        今村 雅史
鳥帰る天気予報は明日は雨          西岡みきを
見はるかす大海原を鳥帰る          榎原 洋子
鳥帰る稚児手を上げ声を上ぐ         三澤 福泉
風に乗り隊列組みて鳥帰る          住田うしほ
標なき行路迷はず鳥帰る           山下 之久
鯨音の届く天路へ鳥帰る           髙松美智子
鳥引くや風車は風を送るかに         島津 康弘
渋滞の湾岸線や鳥帰る            上西美枝子
ふるさとの記憶薄れず鳥帰る         松井 信弘
曇り空に溶け込むように鳥帰る →やうに   日澤 信行
二月堂の円き欄干鳥帰る           谷野由紀子
クレソンを添へて整ふワンプレート      上西美枝子
クレソンや小川に沿うてびつしりと      藤田 壽穂
民宿の庭のクレソン添ふる膳         原田千寿子
小流れを左右に渡り川菜摘む         浜野 明美
クレソンの香の朝粥に覚醒す         髙松美智子
クレソンの咲ける川辺に鯉ぽかり       西岡みきを
クレソンの香る水辺の煌めける        田中よりこ
クレソンをたつぷり摘みて句碑開き      角野 京子
クレソンに水玉きらり煌めきぬ        斎藤 摂子
クレソンの入荷未定や西行忌         関口 ふじ
クレソン群る蕎麦屋のそばの湧き水に     松井 信弘
日のきらら水の清きにみずからし→みづ    大塚 章子
レアで焼くクレソン添えて白磁皿 →添へて  中村 克久
川菜摘む奥津の漏れ日散らしつつ       小澤  巖
クレソンを唇拭ひつつ残す          今村 雅史
一束のクレソンを買ふ道の駅         谷野由紀子
フォークでは捉まへづらきみずがらし→みづ  日澤 信行
摘みたてのクレソン貰ふ散歩途次       中川 晴美
みづがらし添へて納豆巻を食む        住田うしほ
里山の小流れに摘む川菜かな         板倉 年江
妻の手にクレソンあれぱ肉料理        山下 之久
天然とある草餅の列へつく          斎藤 摂子
写真撮る桜の小枝引き寄せて         上西美枝子
高瀬川の狭き川面に花筏           松井 信弘
桜餅ひとりが買へば次々に          星私 虎亮
店頭に装ひ新た種袋             山下 之久
初面の舞粛々と春灯             大塚 章子
春愁の陰影眉に千手仏            小澤  巖
いつまでも暮れぬ夕暮小鳥引く        渡邉 房子
菩提寺に花持ち寄りて灌仏会         瀧下しげり
仲春の城趾へつづく木の根道         角野 京子
春雨や墳墓へ続く石畳            木村てる代
石切りの音が間遠に鳥帰る          伊藤 月江
五万石といへど城趾の花盛り         今村 雅史
島に住みいまだ旅人鳥帰る          島津 康弘

  佳作

恙無く三回忌終へ鳥帰る           関口 ふじ
旅果ての寂しき車窓鳥帰る          春名あけみ
二上山見ゆる大窓鳥帰る           五味 和代
クレソンを摘めば水面の輝けり        木村てる代
クレソンの流れ豊かや箔の町         春名あけみ
ステーキ皿クレソンだけを児は残し      三澤 福泉
クレソンや母を誘ひて洋食屋         金子 良子
城の花つぼみ豊かに人を待つ         榎原 洋子
クレソンの苦味噛み締め食すすむ       渡邉 房子
湯布院に汽笛こだまし山笑ふ         うすい明笛
花愛づる人の異国語心地よし         山内 英子
街おぼろ薬屋コンビニ飲食店         中村 克久
裏山は山桜また山桜             西岡みきを
ぴかぴかの入学式のお父さん         関口 ふじ
海越しに立山揺るる蜃気楼          住田うしほ
桜餅葉ごと食べよと同期会          藤原 俊朗
葉に残る塩味よろしき桜餅          五味 和代
花の冷え肩の触れ合ふ足湯かな        三澤 福泉


 感想と添削

原句 双塔の間をぬけて鳥帰る
感想 双塔の間……ほんとかなと思われてしまいます
添削 双塔の見ゆる空なり鳥帰る         金子 良子

原句 鳥帰る訓練したごと整然と
感想 訓練した 口語となります
添削 訓練のごと整然と鳥帰る          大塚 章子

原句 渓川に水輪の生れつぎ鳥帰る
感想 渓川、鳥帰るには少し狭い印象です
添削 大沼に水の輪残し鳥帰る          伊藤 月江

原句 鳥帰る昼の干潟の広さかな
感想 干潟、季重りです
添削 鳥帰る潮の引きたる湾残し         瀧下しげり

原句 帰る鳥餌食み寝てその時を待つ
感想 擬人化、失敗の印象です
添削 餌をよく食み明日帰る鳥らしき       渡邉 房子

原句 池の端に和毛散らせて鳥帰る
感想 散らすより残すでしょうね
添削 池の端に和毛を残し鳥帰る         木村てる代

原句 古里に最後の最後の校歌鳥帰る
感想 タイプミス。惜しい!!!!
添削 古里に最後の校歌鳥帰る          藤原 俊朗

原句 校門に尊徳像や鳥帰る
感想 校門だと、金次郎像でしょうね。尊徳は成人後
添削 校門に金次郎像鳥帰る           角野 京子

原句 鳥帰る太陽の塔乗り越えて
感想 乗り越えに要一考です
添削 鳥帰る太陽の塔見ゆる丘          斎藤 摂子

原句 クレソンや川辺に美しき波模様
感想 水辺でしょうね。ここは水面としましょう
添削 クレソンや水面に美しき波模様       伊藤 月江

原句 クレソンにやさしく触るる猪子雲
感想 水に映っているのでしょうが……
添削 クレソンにやさしく触るる雲の影      うすい明笛

原句 クレソンやまず駆け足でバター買ひ
感想 状況の説明になりました
添削 クレソンを貰うてバター買ひに出づ     星私 虎亮

原句 クレソンの薫る朝粥山の宿
感想 山の宿が場所の説明になりました。取合せでなく一句一章で
添削 クレソンの朝粥薫る山の宿         藤原 俊朗

原句 木製の猪口に酒注ぐうららけし
感想 木製、固い表現になりました
添削 木の猪口に注ぐ吟醸酒うららけし      日澤 信行

原句 春の星仰ぎ語り部となる旅窓
感想 なるという断定に要一考です
添削 春の星見て語部のごと話す         榎原 洋子

原句 花冷えの四阿昏きに吾も寄らぬ
感想 下五、表現に要一考です
添削 花冷の四阿に人影もなし          髙松美智子

原句 境内にキッチンカー居る春の午後
感想 居るが説明調です
添削 境内にキッチンカーや春の午後       金子 良子

原句 どこ迄も転ぶ帽子よ春一番
感想 ここは転がるでしょうね
添削 どこ迄もころがる帽子春一番        浜野 明美

原句 引鳥や孤高の鷲の事思ひ
感想 季重り解消できません。ご再考下さい