今月の主宰作品

尾を振る鳥     朝妻  力

なやらひの復路に提ぐる恵方巻
それらしき気配もなくて寒明けぬ
立春や伊丹台地に蔵いくつ
初午や鍵を咥ふる狛狐
警報も出でて列島冴返る
耳切るるほどの風くる寒戻り
風船をくばりスーパー開店す
子二人と手つなぐ父御うららけし
継体の墓所たる阜春浅し(今城塚古墳九句)
墳丘の裾に菜園茎立ちぬ
鍬肩に翁の過ぐる雨水かな
記紀の世のこゑのびやかに春の鳶
連凧の千切れ吹かるる楢の枝
太刀凜と武人の埴輪春日濃し
馬に付く牛の埴輪ものどけしや
力士埴輪は土師氏の名残春深し
止まりては尾を振る鳥やうららけし