国静か 朝妻 力
国静か雀の鉄砲びつしりと
明け方の町のどこかに猫の恋
小舟見て子ら見るだけの磯遊
春深し藤の挿頭の巫女三人
春深し坂下るにも息をつき
漉油肴に春の夜更け酒
風止みて立夏の日差しやはらかし
黐の葉もいよよ緑に夏初め
何か落ちゐぬかと初夏の畷ゆく
丘陵を這ひゆく小道風青し
電線に巣立ちうながす四十雀
まつすぐにメタセコイアの新樹並む
新茶汲む唐子の跳ぬる伊万里焼
古寺の日差しを集め石榴咲く
晩鐘に尺取虫が頭上ぐ
傘さして紫煙くゆらす走り梅雨
鬼平の飲み方まぬる鮎の宿