平家の流れ 朝妻 力
膝に手をあてて子ら座す大花野
鬼ごとの子らを暫追ふ猫じやらし
石段を狭めて萩の揺れやまず
三十段ほどの鎮守に登高す
細やかに鋏のひびく松手入
筋見せて色付きそむる木の実かな
秋高し機影を追へる爆音も
中秋や田ごとの色も美しく
秋高し築三百の酒の蔵
一村は平家の流れ夕紅葉
うそ寒を背中に見せて朝の子ら
人恋し薄雲かかる十三夜
酒を褒めつまみを褒めて秋の宵
常温の酒や牛蒡のやはらか煮
つながらぬ話聞きゐる暮の秋
身に入むや十日遅れの一訃報
たばこ屋もいよよ閉店秋深し