◆課題俳句◆   岡田万壽美選


課題 蒲団・布団・掛蒲団・敷蒲団・藁蒲団・羽蒲団・絹蒲団・蒲団干す・干蒲団・肩蒲団
 中綿を詰めた防寒用の夜具。主に綿、羽毛、パンヤ、近年はポリエステルの綿もあるが、かつては藁や蒲なども使った。本来、蒲団という漢字は蒲を入れた団(丸いもの)の意味で、藁を入れれば藁蒲団である。(長谷川 櫂) 

新版角川俳句大歳時記より

いとし子のうもれてまろき蒲団かな    長谷川春草
病む僧の蒲団のすそに僧一人       高野 素十
ふるさとの重き蒲団の浜絣        木村 蕪城
佐渡ヶ島ほどに布団を離しけり      櫂 未知子
何もせぬ一日がうれし布団干す      都合ナルミ
家中の蒲団を干して海が見ゆ       野木 桃花
鳥籠の日向を残し蒲団干す        後閑 達雄
江ノ島と富士のあひだに蒲団干す     大森 春子
鴨川のきらめきに向け布団干す      杉浦 圭祐
干布団叩く音して此岸かな        中山 純子
縁側には猫のゐるべし干蒲団       細谷 喨々
浮雲や鉄路の柵に干蒲団         河原地英武
ぽつねんと母の蒲団の白さかな      結城  万




特 選

保育所の窓といふ窓布団干す       田中 幸子

 〈窓といふ窓〉という表現に子ども達のお昼寝用の布団が、沢山干されているのがわかります。そして、〈保育所〉ですから、色とりどりの小さな布団だろうなと思います。キャラクターの柄もあるかも知れませんね。気持よく晴れた空、賑やかな声が浮かびます。遊び疲れた子ども達は、日の匂のする、ふかふかの布団でお昼寝が出来ますね♪この句の季語は蒲団ではなく布団ですよね。大事!

嵩高く絹の嫁入り蒲団古る        藤田 壽穂

 こちらの季語の漢字は「蒲団」もちろん、蒲の穂が入っている訳ではないですが、昭和の嫁入り道具には、真綿でふかふかと分厚く作られた「嫁入り蒲団」なるものが定番でした。昭和も後期になると羽毛布団に取って代わりました。作者の家の押入れには、その「嫁入り蒲団」がまだあるというのです。〈嵩高く〉に実感があります。立派なものであったほど嵩張る。けれど高価な荷を用意してくれた親を思うと処分に踏み切れないものです。〈古る〉に来し方への思いも漂います。

蒲団干す夢の続きを日にさらし      小林伊久子

 どんな夢を見たのでしょうか。〈日にさらし〉ですから、あんまり良い夢ではなかったのかも知れません。お日様の力で綺麗さっぱり浄化して貰って、今夜は良い夢を見られますように。そんな作者の気分が伝わります。違ってたらごめんなさい。うふふ。まだ蒲団のなかで夢の続きをみたい的な視点が多い中で、〈夢の続き〉を日にさらしてしまう作者の視点が個性的で、とても興味深く読みました。どんな夢を見たのかしら?

定番のカレーを仕込み蒲団干す      春名あけみ

 カレーは作るではなく、「仕込み」です。この仕込みが重要です!で、〈蒲団干す〉ですから、あしたの為ですよね?まるで謎解きみたいで楽しい。〈定番の〉ということは、もう決まり事になっているのがわかります。たぶん、お子さん達の帰郷の準備なのでしょう。得意料理の一つなのかな。美味しいのだろうなぁ。お母さんのカレーを楽しみに帰って来られるのでしょうね。張り切っている作者が見えます。季語〈蒲団干す〉が雄弁です!

蒲団干し古都の狭間の日を貰ふ      児玉ひでき

 〈日を貰ふ〉という表現に惹かれました。〈古都〉とも響き合う。この古都は〈狭間〉とあるので、奈良よりは京都かなと読みました。古都に暮らす人の心の持ちようを感じるような素敵な一句です。

美しくたたみし布団吾子発ちぬ      大澤 朝子

 帰郷されていたお子さんを見送り、ほっとし、少し寂しくもある作者です。がらんとした部屋には、〈美しく〉たたまれた布団。美しく!ですよ~なんて良い子に育たれたの!冥加ですね。きっと。この方なら社会に出ても立派にやっていかれると思います!帰るではなく〈発ちぬ〉と納めたことも明るい未来を感じました。




入 選

良く晴れて明日退院の蒲団干す      田中 愛子
敷きつめし布団の裾を踏みゆけり     浜野 明美
肩口のさびしき旅の掛蒲団        島津 康弘
干蒲団叩いて逃がすつくも神       伊津野 均
帰る子のロングサイズの蒲団干す     原  茂美
腹の子に小花模様の布団縫ふ       田中よりこ
お揃ひのベビー蒲団とロンパース     関口 ふじ
快癒得て絵本繰る子や蒲団干す      川口 恭子
ミルクの香残るちひさき蒲団かな     今村美智子
引きずりて縁側に干す蒲団かな      岡山 裕美
蒲団たたく隣家の影に入る前に      谷野由紀子
蒲団干す秀次城下の仮住ひ        宇野 晴美
蒲団干す風のにほひを嗅ぐために     岡田ひろ子
一人寝に慣れて親しき羽蒲団       瀬崎こまち
布団敷く子らころころと体操す      高橋 佳子
ミッフィーの布団甘やか熟寝の子     野村よし子
孫三人雑魚寝に掛くる羽蒲団       福長 まり
日に因つて重さ異なる掛蒲団       播广 義春
有るだけの蒲団を干して子ら迎ふ     松井 春雄
干蒲団に包まるはらぺこあおむしと    香椎みつゑ
ひ孫来ると姉は蒲団を干しをりぬ     五味 和代
独り寝も早十年の蒲団干す        冨安トシ子
一列に記念旅行の蒲団並む        宮永 順子
元気なる証乱るる掛布団         越智 勝利
蒲団干せば亡夫の声が叩くなと      小見 千穂
朝明けにこむら返りや羽蒲団       髙木 哲也
生まれ来る命待ちをり布団選る      髙橋美智子
蒲団干す仄かに海のかをりして      星私 虎亮
宿酔や蒲団の横に起くる朝        光本 弥観
部屋干しの蒲団にねまる猫二匹      浅川 悦子
もう要らぬ子ども布団を妻と干す     うすい明笛
六甲の機嫌よき日や干蒲団        奥本 七朗
極楽と蒲団の中で言ひし祖母       小山 禎子
兄弟子と声掛け蒲団畳みけり       河原 まき
故郷に厚き蒲団のぎつしりと       田中せつ子
入院の夫に掛くる羽蒲団         大塚 章子
病棟の慣れぬ蒲団の軽さかな       山内 英子
階段を滑る蒲団の軽さかな        三原 満江
母からの蒲団使はず捨てられず      上和田玲子
掛け直しまた掛け直す干蒲団       杉浦 正夫
懐かしき母の匂の干蒲団         松本すみえ
ふかふかの布団に遊ぶ子と三毛と     松浦 陽子
老いたれば二人掛かりで蒲団干す     松本 英乃
羽蒲団手足の長き女の子         志々見久美
羽蒲団も母には少し重く見ゆ       中尾 光子

佳 作

羽蒲団の中の温もり満ち足りて      土屋 順子
布団干す向う三軒両隣          吉村 征子
布団干し鬱憤晴らすごと叩く       小澤  巖
エプロンにきあひ自づと蒲団干す     酒井多加子
南向きの中層階に布団並む        板倉 年江
ねまりゐし猫のへこみや蒲団干す     北田 啓子
欄干に数多の布団干されをり       宮田かず子
賑やかな子等の声受け布団干す      山本 創一
病癒へ朝日燦燦布団干す         溝田 又男
押入れの蒲団何組義母の家        野村 絢子
子ら帰り干す四組の客布団        三澤 福泉
ママちやりに蒲団を積んで帰路急ぐ    浅川加代子
ほんわかと稚の温みや蒲団干す      渡邉眞知子
大の字に寝転び試す羽布団        福原 正司
家中の蒲団を干して深呼吸        山﨑 尚子
誕辰の祖母に送れる羽蒲団        平橋 道子
天気予報今日は布団を干す日よと     中尾 礼子
布団柄母の好みの縞模様         中野 尚志
潮騒の穏しきあした蒲団干す       中尾 謙三
幼子の笑顔浮かべて布団干す       船木小夜美
日だまりや抱えて干せる羽蒲団      野添 優子
二人目の曾孫の蒲団干しにけり      片上 節子
一人用に嫁入布団仕立替ふ        村川美智子
ベットから半分落つる羽蒲団       太田美代子
見かけ通りに重き実家の蒲団かな     加納 聡子
ふるさとの重き蒲団の眠りかな      吉沢ふう子
保育所に蒲団干されて砂遊び       宇利 和代
マンションの高層に照る干蒲団      佐々木一夫
ベランダの手摺ずらりと布団干し     竹内美登里
晴れ晴れと青空仰ぎ蒲団干す       穂積 鈴女
年上の友に贈らる羽蒲団         近藤登美子
親と子の会話楽しき布団かな       山地 高子
照るとみて子らに着せたき布団干す    櫻井眞砂子
米寿にと子から届きぬ羽布団       深川 隆正
夫おらぬ家のひとりの蒲団干す      冨土原康子
捨てがたし思ひ出詰まる掛蒲団      斎藤 摂子
孫達の泊まる蒲団の用意せり       中田美智子
蒲団蹴りトイレに通ふこと三度      大木雄二郎
羽蒲団蹴りて持ち上げまた寝入る     河井 浩志
断捨離の出来ぬ布団や母想ふ       児島 昌子
蒲団干す狭き下宿の中二階        長尾眞知子
宿坊にホテルと紛ふ蒲団敷く       西山 厚生
挨拶をかはす晴れ間や布団干す      本田  伝
布団干す鴨川沿ひのヴェランダに     人見 洋子
羽蒲団入れてくれろと猫の鳴く      松本 葉子
窓開けて帰阪する子の蒲団干す      渡邊 房子
わんぱくのねむりけとばす蒲団かな    青木 豊江
吾の蒲団押しあげ潜る愛猫よ       米田 幸子
ふつくらした綿布団より日の匂ふ     佐々木慶子
片付くる七人分の蒲団かな        越智千代子
寒い朝布団の軽きに目をさます      井上 妙子
頰つつむ日向の匂ひ蒲団干す       片上 信子
頭から子ども潜れる羽布団        髙橋 保博
平穏やどの家もみな干布団        高松眞知子
蒲団干す母の優しさ陽の匂ひ       布谷 仁美
干蒲団仕舞忘れや陽に垂れて       今村 雅史
床に就き老いをまた知る肩蒲団      住田うしほ
よき夢がいよよ膨らむ干蒲団       武田 風雲
日の匂ふ蒲団を纏ひ夢の中        中谷恵美子
羽布団深く被りて夢の中         井上 白兎
縁側に干さるる蒲団日の匂ふ       原田千寿子
祝ひにと軽き布団を選びたり       金子 良子
パタパタと隣も布団干す日和       小薮 艶子
太平の世の蒲団中稚の顔         竹村とく子
寝起きて乱れし布団を整しけり      中村 克久
花柄の蒲団干されて東山         新倉 眞理
蒲団へと潜りて吾子と声を噛む      林  雅彦
陽の温み盛り込む蒲団垣根越し      川尻 節子
夜半目覚め重き蒲団を引出せり      杉山  昇
後輩といふ名に恥ぢず蒲団干す      角野 京子
日日早し一句あたたむ羽蒲団       長岡 静子
晴天に吾子の布団を干しにけり      乾  厚子
晴れ渡り村は蒲団の花盛り        西岡みきを
孫をよぶ蒲団の数を合わせてつつ     糟谷 倫子
ピンキリの価格に惑ふ羽布団       鎌田 利弘
しばく夜はかねて用意の羽蒲団      寺岡 青甫
山小屋の屋根いちめんに布団並む     榎原 洋子
谷間に美声の響くこたつ舟        木村てる代
朝寒の猫は散歩を控え目に        水谷 道子





次回課題
立春・春立つ・春来る・春来・春さる・立春大吉


締  切
2月末日必着

巻末の投句用紙又はメールで、二句迄。編集室宛
メール touku-kumonomine@energy.ocn.ne.jp