誌上句会

第400回  作品集

(11月1日 更新)

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A01 不在ふと不思議に思ふ鰯雲
A02 生き死には神仏まかせ虫の闇
A03 蟬時雨手を振る妻に笑顔かな
A04 木造の島の教会花蜜柑
A05 オレンヂの三日月低く窓の列
A06 秋深しビルの谷間に朱の鳥居
A07 晩年の凡こそよけれ水引草
A08 ぼうたんの根分日和や叺敷く
A09 列島は余熱を抱へ秋彼岸
A10 百日を咲ききる花や秋暑し
A11 出番待つシャチの尾ひれは奮いたち
A12 淡海に浮かぶ鳥居や天高し
A13 脱ぐ笠に潮の香ほのと秋遍路
A14 街角にジャズを聞きゐる良夜かな
A15 秋蜘蛛と真夜の格闘小半時
A16 うとうととすれば鹿鳴く夕まぐれ
A17 あちこちを堀り起こしけり薩摩芋
A18 一日を今生として芙蓉咲く
A19 杣道を寛なり歩む秋の声
A20 友の声聴きたくなる夜それも秋
A21 秋うらら迷ひつつ飲む不老水
A22 楝の実たもとに鳥の水飲み場
A23 河口までおよそ八里を落し水
A24 流木にかけて眺むる秋の海
A25 子の無きを案じし母の墓洗ふ
A26 姫が袖振りしか楓ほのぼのと
A27 ちちろ鳴く物置に妣の文机
A28 頂きし栗をご飯にこの夕べ
A29 夏バテに染みる塩気の紫蘇エキス
A30 瓦塀続く細道京の秋
B01 新酒酌む和らぎ水も注ぎ足して
B02 戦中の記憶深まる盆の昼
B03 幼子の目に送り火の灯の揺らぎ
B04 すいつちよの髭ながながと夜もすがら
B05 夕涼やはりまや橋の待合せ
B06 早朝の百舌の高鳴き谷の黙
B07 山火事の焦げ跡著き夏の果
B08 山畑をしばらく照らす秋夕焼
B09 燦燦と端山の落暉去ぬ燕
B10 目を凝らす皆既月食虫の声
B11 葛咲ひて墓苑の主となりしかな
B12 長し夜やスカイツリーと常磐道
B13 淡路町えびす南京手に入れる
B14 碑に刻む浦上崩れ秋深し
B15 切通し風の抜け来る葛の花
B16 戻られぬ道をひたすら秋の風
B17 九月尽く雨雲アプリみをるまに
B18 大掃除するところなし立話し
B19 宮跡に竜胆の青極まれり
B20 みちのくの素木の塔や秋高し
B21 潮騒と競ふがごとき虫時雨
B22 墳丘に盗掘の跡ちちろ鳴く
B23 百済仏持つ水瓶の愁思かな
B24 年々に寂しさ募る秋の暮
B25 夜々幾世欠けざる今日の月青し
B26 秋の夜や八十路なりしも母恋し
B27 大和路を進む列車や天高し
B28 稲刈られ風の見えなくなりにけり
B29 やや子ぶり五度目に咲きし仙人掌花
B30 敬老日傘寿と喜寿の糸電話
C01 蟷螂を怒らし独りあそびかな
C02 風を聴く一路となりし竹の春
C03 蚯蚓鳴く人は都会に憧れる
C04 爽やかや眉の凜々しき修行僧
C05 びりの児にわれの重なる運動会
C06 テレ将棋盤面見つつ秋暑し
C07 秋気澄む夜明けの空に星ひとつ
C08 爽やかに掛緒切る音加冠の儀
C09 木犀の漂ひ来たる夕間暮れ
C10 敬老の式典を待つ体育館
C11 頼られし日は遠くなり秋夕焼
C12 酔芙蓉そろそろ夫のジャズタイム
C13 占ひに佳きこと少し秋の暮
C14 桃吹いて風の生まるる弓ヶ浜
C15 秋気澄む朝雲朱に染まりをり
C16 窓拭きて今日から秋と思ひけり
C17 青根の秋伊達騒動の始まりぬ
C18 秋彼岸水辺に亀の甲羅干し
C19 二つ三つ末成り引きずり蔓たぐる
C20 赤銅の月下りゆく白露かな
C21 刀匠の妻てふ人や藍の花
C22 ためし堀り期待はづれの甘藷かな
C23 かつこうと替はる信号秋麗
C24 角打ちの戸口に近き残暑かな
C25 りんどうを一輪卓にメモ残す
C26 黄菅花けふを限りと咲き競ふ
C27 秋草を手折りて母に渡したり
C28 ホッチキス玉が無くなる敗戦日
C29 澄む秋や葉擦れさやかに神の杜
C30 会果てて足取り軽し夕月夜
D01 犬小屋はがらんどうなりちちろ鳴く
D02 横断歩道の真中にくひぜ秋うらら
D03 落日に赤を極むる曼珠沙華
D04 みはるかす野山も空も秋の中
D05 和やかに生きし家族や日々長閑
D06 落葉降る雲の上なる小学校
D07 少年に給はる俳句敬老日
D08 前籠の犬と目の合ふ秋彼岸
D09 秋すだれ古民家カフェにイタリアン
D10 さわやかや夜雨の湿る朝微風
D11 秋蝶を前に後ろに磴二百
D12 阿蘇の野の風に触れ合ふ吾亦紅
D13 颯爽と力車駆けゆく竹の春
D14 温暖化やきつちり彼岸に曼珠沙華
D15 どこからか秋刀魚焼く香や家路つく
D16 亡き人の顔思ひ出す盆の月
D17 秋光の嵯峨野や遊子賑はひぬ
D18 歌ふやうな水の重奏黄落期
D19 無沙汰せる従兄弟会から今年米
D20 杼の走る音の軽さや藍の花
D21 虫の音にしばし佇む草の原
D22 六道の辻に迷へる秋の蝶
D23 燻らせて秋刀魚焼く日々懐かしむ
D24 天高し讃岐うどんの多き街
D25 秋茄子を焼く小さき頃思いつつ
D26 雑音の消ゆれば虫の声ひそと
D27 鳴く虫に貰ひ泣きする夕べかな
D28 カップ胸に待宵の月抱きしむる
D29 曼珠沙華畦にぎつしり並び立つ
D30 若き母ミシンにも慣れよなべせり
E01 目の前についと横切る赤蜻蛉
E02 風のままに墓のまはりを秋の蝶
E03 エメラルド婚祝ふ夕べや野紺菊
E04 過ぎし日のアルバム並ぶ居間の秋
E05 録り置きしテレビ講座を見る夜長
E06 霧の帳あがり火口湖瑠璃深し
E07 そよぐ風道に零るる葛の花
E08 設へも終へて二人の月見かな
E09 コンサートあとのしじまや月明り
E10 寺なれや白一色の曼珠沙華
E11 敬老日大波小波乗り越え来
E12 眼前の雲の質量秋の午後
E13 お帰りと言ふ人もなく鉦叩
E14 滴りや石に還りし磨崖仏
E15 順縁を願ふ白寿の敬老日
E16 魚捌く白露の水を惜しみなく
E17 新米を二キロだけ買ふ老夫婦
E18 昼餉には餡パン一つ台風禍
E19 夕風を受けて河原で芋煮会
E20 テレビ壊れ読書に励む夜長かな