森 十二月号 主宰 森野 稔
平成二二年一〇月、森野稔が富山で創刊。加藤楸邨を師とする齊藤美規が先師。自然と人生の滋味を詠む。
[月刊](俳句年鑑より)
「森」の発行所の富山県下新川郡朝日町は東に新潟県糸魚川市、西に入善町、黒部市の富山県東部にあり、海と山岳を控えた自然豊かな地。すばらしい情景を詠む句も多いだろうと頁を開くと、決して花鳥諷詠の句ではなく、人間を詠む句が特徴で、人間探求派の加藤楸邨からの俳句の流れが守られている。「森」は現代俳句協会に所属し、森野稔主宰は近年まで富山県の協会長を務められた。朝妻力主宰は「十五年ほど前の風の盆の折に、八尾町を案内して貰いました」とのことで旧知の間柄でもある。
今号の巻頭頁「感銘句逍遙」〈一八三〉では朝妻主宰の〈秋日避け弦のしごきを伝授せり〉の句を森野主宰が鑑賞されている。森野主宰の随筆「私の俳句と糸魚川」では俳句初学時代の糸魚川の思い出と、隣り合った朝日町と糸魚川だが新潟県と富山県の県民性の違いの話が興味深い。
森野稔主宰作品「人品」より
逃げ遅れ雑兵は吾稲つるび
田の神の居場所剝き出し大刈田
全身で日を舐めすすむ秋の蛇
人品を保つ程度の草虱
「同人特別作品」より
黒葡萄つまんでレッドツェッペリン 松野 半畝
秋の夜夫ウクレレに奮闘中 荻島 宮子
「森々抄」(同人自選作品)より
秋草や地球の窓の石畳 久保田孝子
月の秋祈りのときは瞼とづ 早津 翠邦
秋夕焼褪せて汐の香濃くなりぬ 杉山美津子
住みにくいとさっさと蛇の穴に入る 寺田 スズ
読み止しに挟んでみたき昼の月 後藤みち子
天嶮をかけのぼりくる秋怒濤 古澤 桃
柚子届く昼は文鎮夜は風呂に 塩田 修三
切り過ぎし前髪にある秋思かな 山森 早苗
秋没日龍宮の道あの辺り 西尾 幸子
秋彼岸むかしの人に街で遭ふ 加藤 岩
「森集」(森野稔選)より
みちすがら漢字逃げゆく秋の雲 吉本 敏子
稲妻のたびに動く目通話中 神田 秀子
眠れるも一生のうち秋の雨 麻積久美子
夫いつも嫁には優し衣被 荒木 忍
栃の実三つ拾って今日は縄文人 俵田美惠子
秋蝉の声の限りのコミカフェ 島端恵津子
子の帰る通草の口開く日に 山﨑てつ子
夜の秋の懐かしき駅吉祥寺 松野 半畝