<俳誌紹介>    伊津野 均

鷹   二月号   主宰 小川軽舟

 昭和三九年七月、藤田湘子が東京で創刊。師系水原秋桜子。韻文精神を尊重し、会員一人一人の個性を磨く。
  [月刊]   (俳句年鑑より)
 言わずと知れた俳壇屈指の「鷹」である。「鷹」出身の著名な俳句作者は辻桃子「童子」主宰、小澤實「澤」主宰、中西夕紀「都市」主宰等々、現代俳句、伝統俳句の両分野へと広がっている。藤田湘子氏の後を継いだ小川軽舟主宰は第一句集『近所』で俳人協会新人賞、『朝晩』で俳人協会賞、『無辺』で蛇笏賞を受賞された。同人では岩永佐保氏、奥坂まや氏、加藤静夫氏など著名俳人を擁し、編集長の髙柳克弘氏は二十代から俳壇で活躍している気鋭で、華麗なる結社である。「鷹」では俳句を作る際の、口語、文語、仮名遣等の選択は作者に任せ、作者の個性を生かした表現こそが俳文芸と標榜している。誌の表紙の谷山彩子氏のイラスト画が瑞々しい。
 「雲居」(小川軽舟主宰作品)より
家ぢゆうの隙間に光年迎ふ  
初暦数字おのおの端然と  
人形の目の瞬かぬ淑気かな  
松越しに雲居はるけき参賀かな  
 「日光集」より
静けさがだんだん重し日向ぼこ    奥坂まや
帰らむか菊人形に手を引かれ     加藤静夫
 「月光集」より
二羽の木菟のやうによりそひあへば雪 南 十二国
剝かれつつ林檎あかるくなりゆける  髙柳克弘
枯芭蕉吹かるる夜の東司かな     桐山太志
入れない門の向かふの聖樹かな    辻内京子
 「鷹集」(小川軽舟主宰選)より
絵襖や貞女に返る髪束ね       まつら佳絵
白足袋や小さな声のよく通る     新宮里栲
金髪で作る個性や枇杷の花      鈴木之之
手の平にゆがみて重し新豆腐     高良千里
転んでは起きるロボット神の留守   坂本 空
川霧や先に眠れるひとの夢      此雁 窓
空耳に返事をしたり秋桜       岡田千賀子
ピンク映画館過ぎ行けば蓮の実飛ぶ  たなか 礼
湯豆腐や謝り方が気に入らぬ     鈴木雅史
果無山道に迷ひし初枕        近藤洋太
革ジャンの匂いか男の匂いか     古賀未樹
貨車繋ぐ音が枯野を貫けり      なかむら美和
菊師来てふくよかに胸ととのへつ   中尾謙三
しぐるるや男にもらふ煙草の火    松尾初夏
白息でぬぐふ鏡や生きてやる     まつおまりこ
貉きつとその辺にゐる月夜かな    大西 朋
五センチの胎児の画像クリスマス   佐藤すみれ
今後ますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。