第458回 作品集
(5月15日更新)
この中より5句選句してください
A01 受付に春蘭香る歯科医院
A02 庭石の影に春蘭みつけたり
A03 春蘭や朝日に花芽の色淡し
A04 春蘭や木々に囲まれひつそりと
A05 春蘭や吾なりの連休タイム
A06 春蘭の里山深くひそと咲く
A07 春蘭の在りし所に今はなし
A08 木洩れ日に楚々とさ揺らぐほくりかな
A09 春蘭や届かぬ崖に二輪ほど
A10 春蘭や尾根を越ゆれば有馬の湯
A11 春蘭やおとと二人と縁を切り
A12 春蘭咲く平家ゆかりの碑を仰ぎ
A13 粗朶拾ひし里の裏山ほくり咲く
A14 春蘭の美し元興寺塔跡に
A15 春蘭や母の遺せし鉢五つ
A16 木漏れ日の中に根を張るほくりかな
A17 鉄塔の下に春蘭埋めつくし
A18 春蘭の気ままに増えて鉢の数
A19 春蘭のぽつと咲ゐる大柳生
A20 一株を貰ひし春蘭咲き匂ふ
A21 じじばばの花の山路も遊びの場
A22 忘れ物のごと春蘭が庭の隅
A23 春蘭の地植へ自慢す友をふと
A24 先駆けて庭に春蘭咲きにけり
A25 春蘭の紫ゆるる和菓子店
A26 本膳に春蘭添ふる喜寿祝
A27 春蘭の杉の根方に色を秘す
A28 春蘭や木理の美しき道標
A29 碕風や春蘭香る古茶房
A30 春蘭や山の傾りの日溜りに
A31 春蘭の土の記憶の野山かな
A32 春蘭や庭の真上は薄曇
A33 春蘭が埋め尽くしけりビル狭庭
A34 春蘭や柴を刈りゐる母をふと
A35 春蘭や風のかたちに立ちならび
B01 更衣断捨離などと考へて
B02 家中の窓開け放し更衣
B03 今しばし急かすな急くな更衣
B04 風に聞き空を見上げて更衣う
B05 通学路白さ眩しき更衣
B06 更衣言葉飾らぬ人とゐて
B07 衣更序でに箪笥預金出す
B08 衿白きセーラー服へ更衣
B09 半袖を箪笥に移す更衣
B10 今時の収納箱に衣更ふ
B11 老けてよりルーズになりぬ更衣
B12 ハンガーの位置をどかして更衣
B13 長き髪束ね少女の更衣
B14 更衣へ園児いよいよ声高し
B15 更衣鏡に常の顔のあり
B16 更衣普段通りの顔をして
B17 年毎に遅れ遅れて更衣
B18 吾の身過ぎ余生簡素と更衣
B19 更衣買ひ足すシャツのLサイズ
B20 姿見に余すサイズの衣更
B21 衣更ひねもす回はす洗濯機
B22 未練なく古きを捨つる更衣
B23 職辞して夫手慣れたる更衣
B24 更衣風花やげる通学路
B25 前髪を少しく切りて更衣
B26 野良着にもささやかなれど更衣
B27 更衣待ちかぬるやう街の熱
B28 軽やかに色鮮やかに更衣
B29 衣更へて風かぐはしき野のホーム
B30 制服の白の眩しき更衣
B31 行きつ戻りつ先にすすまぬ更衣
B32 軽やかな自分に出会ふ更衣
B33 身も心もどつと若やぐ更衣
B34 衣更へて肩のあたりの頼り無し
B35 あれこれと記憶ひもとき更衣
C01 膝の癒え緩り卯の花腐しかな
C02 師の句碑に降り注ぎゐる新樹光
C03 洋館の窓辺溢るるゼラニューム
C04 山藤や車窓に房の連なりぬ
C05 泣きながら傷を洗ふ子子供の日
C06 青空を埋め尽くしたる樟若葉
C07 五百体の観音像や風薫る
C08 ほくり咲き時代めきたる地蔵堂
C09 側転を教へあふ子ら若葉風
C10 信徒らの寺の奉仕は土用干
C11 夏立ちて焼拉麺の焦げ旨し
C12 初節句らし先に葉付きの幟竿
C13 老木の梢にちさく若葉見ゆ
C14 奈良町の鍾馗瓦や飛花落花
C15 伏してなほ夢に散りくる滝桜
C16 泣きずもうすべて引き分け風薫る
C17 金印のちさきに見入る夏始
C18 古きとて脇へやらるる種袋
C19 夏めくや窓少し開けJR
C20 蚊蜻蛉が信号待ちをしてゐたる
C21 晩酌のもつと飲みたいめかり時
C22 母の日やおほきリボンの鉢の花
C23 諍ひの妻の目がゆく風車
C24 花は葉に参道に選る陀羅尼助
C25 何か落ちゐぬかと初夏の畷ゆく
C26 朝上がり若葉萌へ立つ檀那寺
C27 日に照りて風のまにまに若楓
C28 鬼ノ城を遠に吉備路の麦の秋
C29 谷若葉水百選の流れ染む
C30 住職が由来を語る春法会
C31 矢狭間より一本桜真っ盛り
C32 レコードの音色に浸る昭和の日
C33 吹かれゐる若葉に空の見え隠れ
C34 髪靡く浜の潮風春惜しむ
C35 軽やかに薔薇園に押す車椅子