今月の主宰作品

青 田     朝妻  力

唐突と言へば唐突梅雨明けぬ
梅雨明や子がリカちやんと話しゆく
梅雨明の広場いよいよ原野めく
鷺容れぬ高さに青田そよぎけり
選句終へ二ケ月分の紫蘇刻む
蘇と言へる古代のチーズ風涼し
はじめてのキャンプは母の里の庭
テトラポッドを這ひて伸び来る章魚の足
MRI検査終へたる汗拭ふ
日焼濃き傘寿や肩も隆々と
色付きの夢に明けたる熱帯夜
駅出でて選るともなしに日陰道
天下異常やうやく蟬の鳴き出しぬ
日の濃さをなほいきいきと百日紅
夕風や風より聡き青芒
窓を打つ羽虫に覚むる昼寝かな
エアコンに頼りきるなり夜の秋