今月の主宰作品

異界の色     朝妻  力

杵をもつ兎くつきり盆の月
甘え鳴く隣家の犬や星月夜
要塞でありたる峠秋高し
賑やかに園児の列や草の花
段丘の裾を平群の水澄みぬ
水位標の泥洗ひゐる秋の波
啄木鳥のまた聞えくる遊歩道
石垣に秋の名草の一つ揺る
黄ばみゆく木々や光陰矢のごとし
秋夕焼異界の色を醸しつつ
閏月のありし九月の月赤し
葉も添へて画材の石榴皿に盛る
渋滞の先頭をゆく鹿五頭
文机に筆乾きたる夜長かな
ががんぼを追うて葉月を発たれしか(一玄先生逝去)
虫を聞く逮夜の帰路をしばし立ち
銀河濃し何か跳ねたる水の音