今月の主宰作品

朝 鳥      朝妻  力

朝鳥のこゑうるはしき白露かな
小気味好き音を散らせる松手入
四五枚であれど広場の初紅葉
蕾にも端正見するをかととき
渋滞の先頭をゆく鹿五頭
どの家も捥がざるままに柿たわわ
鉢植ゑの蘭もまぶしき開店日
賑やかに小鳥が楡の実を散らす
雲過ぎて明日の名月煌々と
秋の灯の三つ四つ揺るる船溜り
秋晴や米四キロを提げ帰る
新米を炊ぐ郷里の醤油入れ
窓開けて寝ねたる朝の風さやか
口々に秋刀魚の長を褒めあひぬ
人ごゑを恋うて広場へ秋ゆやけ
独りには慣れゐたれども夜の長し
生涯に球蹴る句のみ秋深し