姫路青門 三月号 代表 中嶋常治
松瀬青青の門下、高木浪華氏の次男高木青二郎氏が長く主宰を勤め、六十余年続いた俳句結社誌「青門」は平成二二年に終刊となり、「多摩青門」「大和青門」そして「姫路青門」に分かれて現在となった。[月刊]
現在、編集発行人の中嶋常治氏が代表で同人誌としての会の運営・指導を支えておられる。
誌の巻頭は小寺昌平氏選の師系三代の句から始まる。
はずかしさうに男雛女雛は並べたき 松瀬青青
うららかや鳥籠かけて山の駅 高木浪華
鳴りそうにどうだん蕾む木染月 高木青二郎
会員の作品集は中嶋常治氏の選と鑑賞・添削が丁寧にされ、また、「白鷺抄」の鑑賞は富永美智子氏が読み解く。誌上で句会の「二句句会」「課題句会」なども充実して、いきいきとした句作活動の誌面が構成されている。表四(裏表紙)には中嶋常治氏による当月の推薦句が句のイメージのカラー写真を添えられて、より身近に俳句を楽しめる工夫がされた俳誌だ。尚、会員の作品の表記は現代かな使い。
「白鷺抄」より
実千両活けて貧者の暮しぶり 中嶋常治
難ありとせば癌のこと去年今年 中嶋常治
麦の芽の畝目正しき初景色 吉岡木骨
鳰浮いて来そうここかもあそこかも 小寺昌平
快き帯のきしみや大旦 池内多恵子
有難うと一行を足す初日記 池田芳水
付け爪の介護士の剝く蜜柑かな 岡本 功
望郷は懐炉の温みほどに似て 富永美智子
「千姫抄」(中嶋常治選)より
マスクして物言う眼付け睫毛 永本佳子
数え日や回転寿司に人あまた 太田久子
暗き世にクリスマスツリーきらめきぬ 林 翠香
元日の折り目くせある国旗かな 牛尾節子
大自然に血管根づく雪の朝 橋元文子
映画館出でて寒夜の真知子巻き 植田優穂
行く年の汀に掬う瀬戸の潮 井置 文
「揚羽抄」(中嶋常治選)より
シュトレンの味噛みしめて漱石忌 小林喜久子
多き夢捨てて身軽き福寿草 大谷圭子
一行に励まされおり年賀状 市浦裕子
お焚き上げ泥はね上げて初詣 髙橋麻里
初明り時の扉のひらく音 松本ゆう子
一族の影かたまって初詣 高田敏男
元朝やドクターヘリが翼休め 吉本一馬
作品集の名はいずれも姫路城に所縁の名。白鷺は姫路城の別名。千姫は姫路城の化粧櫓から。揚羽は姫路城天守閣の瓦紋様で創建時の池田氏の家紋。城郭好きにはたまらないネーミングである。
今後ますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。