<俳誌紹介>    伊津野 均

爽樹  七月号    代表 勝浦敏幸

 平成二三年一月、埼玉県で創刊。小澤克己(「遠嶺」主宰)の情景主義を受け継ぎ、代表制の民主的運営を理念とする。[隔月刊]   (俳句年鑑より)
 小澤克己氏の急逝により「一誌一代」の遺志から「遠嶺」が終刊となり、その志を継ぐべく会員によって創刊された「爽樹」。小澤氏の提唱された〈情景主義〉の「情は人、景は自然として人と自然が一体となったもの」を俳句理念としている。会の運営は集団指導体制とも云えるベテラン会員による句会の指導、主宰は置かず任期のある代表制と合議による、と提唱されている。現在の勝浦敏幸代表は四代目で令和六年に就任された。
 今号はこの春に逝去された小山徳夫初代代表の追悼号で「爽樹」創刊に多大な貢献をされた氏を偲ぶ特集記事が並ぶ。小山氏はライフワークとして「風の盆」への旅を長く続け、朝妻力主宰も何度も「風の盆」でお会いしていた。
オリオンへ天馬となつて羽搏かむ 小山徳夫
全山の飛花飛花落花飛花落花   小山徳夫
 勝浦敏幸代表作品「にれかむ」より
柵に来て牛のにれかむ春景色
俳縁に感謝の別れ花の雨
 河瀬俊彦名誉顧問作品「エール」より
芽柳の風におのれを失はず
たんぽぽや座ればみんな友だちに
 「爽樹集」(会員作品)より
長旅のつばめ安らぐ道の駅      小林眞彦
投函は隣町まで花菜風        谷川信子
祖母の手に抱かれし母を知る雛    村田菊子
春月や影の濡れゆく蔵の町      黒岩裕介
茹でたてのパスタに春陽からめけり  赤池英津子
薔薇の芽の動き出したる雨上がり   阿部昭子
初雛やあられを握る指ぢから     一瀬正子
どなたさま微笑む母の空襲忌     久住久代
鼻唄のいつもでたらめうららけし   小峯千枝子
早春の陽射しまばゆき畳の目     坂本むつ子
耕して過去と未来をつなぎをり    清水晃子
小さき花透くる石鹼水温む       須藤綾子
雪汁となる間のなくて春の雪     高瀬文雄
行商の乗り込む支線春の風      多田清貴
少年が耳押し当つる二月の樹     塚原尚子
愛称で呼ばれしことも鳥雲に     服部淳三
やはらかき赤子の蹠桃の花      平林直美
春の雷やあと課長は戻りけり     水谷邦子
喜べば笑顔の増せり福寿草      邑橋節夫
永き日やお地蔵様に一ドル札     茂木 勲
真つ直ぐに育たぬ子ゐてチューリップ 山口典子
美しきまれびとのごと春の雪     山口昌志
今後ますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。