誌上句会

第399回  作品集

(10月1日 更新)

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・特選、入選を各一句選び、本誌・巻末の用紙又はメールにて送付して下さい。


A01 墓前には白百合だけを母忌日
A02 灯を消して金魚とともに眠りけり
A03 神鈴の切れ間なく鳴る酉の市
A04 今朝やつと姿見かけし赤とんぼ
A05 細波のごとき雲なり月透けぬ
A06 地蔵会の菩薩に会ひにバスで行く
A07 旅鞄置きゐるままに秋刀魚焼く
A08 出雲野へ潮の香運ぶ雁渡し
A09 美術館に一日過ごせる終戦忌
A10 AIに学ぶ俳句も十三夜
A11 踏み入れば四方八方飛蝗飛ぶ
A12 訃報の届く夜の静けさを鉦叩
A13 抜け道の床几に販ぐ夏野菜
A14 釣船草揺らして風の通り抜く
A15 時鐘堂ヘ鐘撞きに行く終戦日
A16 雪渓の襞が織りなす利尻富士
A17 蓮の葉に雨の雫の転げ落つ
A18 厨にもつかの間の風涼新た
A19 あの島は祖父の産土花でいご
A20 初萩やホールへ続く道筋に
A21 島へ行く夜のフェリーや星の恋
A22 追憶を残し線香花火消ゆ
A23 川筋のだらだら坂や律の風
A24 白寿まで叔父あと二年天高し
A25 玻璃越しに猫と見てゐる野分雲
A26 灼熱の空に寺鐘の鳴り響く
A27 風の道有るや蜻蛉群れにけり
A28 母宛に大ぶりの梨届きたり
A29 雲湧くや立夏は嫁のバースディ
A30 登りきて山気も汲める岩清水
B01 騒ぐともそつと色づく稲穂かな
B02 鴨川に沿うてしばしの花野道
B03 登りきてさらに夏山露天風呂
B04 戸締りの二階の窓に秋の風
B05 火の山の風に吹かるる萩の花
B06 竹串を刺す秋茄子の焼け具合
B07 一村を跨ぐ大虹余生ふと
B08 聴こえねど読経のなかの大文字
B09 朝日やや南によりて秋立ちぬ
B10 糠床を底より混ずる今朝の秋
B11 山を見て暮らすや雲の峰太る
B12 万緑をゆっくり羽ばたく鷺一羽
B13 山風の絡めば喜喜と猫じやらし
B14 パノラマを一瞬に消すゆだちかな
B15 渓流の煌めき清か星月夜
B16 ベランダによく見ゆ花火独り占め
B17 手をあげて夏の夕暮友帰る
B18 八月や箱根の宿に展望台
B19 老も子も笑顔広がる夏祭
B20 けふ処暑のラジオ体操伸びらかに
B21 亡き父母を偲べば匂ふ夜の桃
B22 朝焼けの雲を背に鷺一羽
B23 語らずにただ酒交はす星月夜
B24 遠つ地に番地ありしか星月夜
B25 百日紅燃ゆ県外ナンバー目立つ午後
B26 鳴き尽くす蟬の骸の仰向けに
B27 せせらぎの淀に足を涼新た
B28 木々に降る光眩しき秋初め
B29 八月や父の妹の叔父の忌日
B30 荒磯に海月の乾く薄暮かな
C01 仰け反りて勝利の校歌天高し
C02 登校を待つ朝顔に陽のやさし
C03 秋出水川にのまるる遊歩道
C04 秋茜森の中過ぐ瀬音かな
C05 愁思あり百の磴行く月参り
C06 三枚の銅鏡出土秋思かな
C07 試着室鏡に問ふて秋を買ふ
C08 戦争の体験語る生身魂
C09 考ふる事も億劫秋暑し
C10 出合から永久の別れや春寒し
C11 廃校に残る記念樹蟬盛ん
C12 テレビカメラ覆ふ秋簾や決勝戦
C13 しみじみと見て秋草の名を忘る
C14 秋暑し末枯れ気味なる樟大樹
C15 処暑のインク滲ませて書く御礼状
C16 夕立に濡らしてならぬ紹介状
C17 あさがほや友ゐるごとく咲きにけり
C18 立秋やひとり残れる会議室
C19 離農胸に畦の花道稲の花
C20 八月や異変異常に馴らさるる
C21 夜上がりの庭にふくらむ虫時雨
C22 秋日濃し海へとつづく石畳
C23 秋風に翼委ねて鳶の声
C24 米好きが見るも嬉しき稲の花
C25 秋蟬や諦めぬてふ師の教へ
C26 人知れず秋立つものに埴輪の目
C27 夫も子も祖国に残す夜学生
C28 水琴窟の調べとなるや秋の水
C29 盂蘭盆や先祖のことを子や孫に
C30 朝顔の萎るを見つめ暮れ泥む
D01 虫の音に心解きたる湯浴かな
D02 穏やかに過ぎゆく日々やデラウェア
D03 稲穂立ち抜けくる風に穂のかをり
D04 万博も後ふた月や秋に入る
D05 夏島に沈む夕日に笑顔かな
D06 蔦茂る煉瓦の壁に夕日かな
D07 蜩や声明の間鳴き継ぎぬ
D08 祈り火の色なき焔原爆忌
D09 雷鳴のなか槌音のひびきけり
D10 車より降りし一歩の残暑かな
D11 算盤は七つ玉秋婆の店
D12 リズム良き音に待ちゐる祭鱧
D13 モノクロの映画観てゐる敗戦日
D14 くすくすと笑ふ声あり村芝居
D15 八月の陽やビル街を満々と
D16 おはようの声さわやかなエレベーター
D17 虫干や伯父の軍服写真など
D18 朝ぼらけ風向きさぐる残暑かな
D19 茹で卵にしかと塩振る夏の朝
D20 古書の香とひそとクツキー晩夏光
D21 盆の月我が名優しく呼びくれよ
D22 秋暑し今昔よぎるひとときか
D23 小麦畑黒穂抜きつつ学校へ
D24 黙こくる森羅万象大ひでり
D25 熊野道浦島草にいざなはれ
D26 陸奥に折鶴飾る星祭
D27 ビール缶下げからからと案山子鳴る
D28 里古りて末法の世の鉦叩
D29 鬼灯の赤きや若き子の遺影
D30 茹で焦げし玉子八月十五日
E01 夕焼の海が絵になる無人駅
E02 子規の国伊予はコスモス真っ盛り
E03 京都はも怨霊の闇大文字
E04 敗戦日野辺に見上ぐる空の青
E05 今朝秋や模様の違うマグカップ
E06 年輪を顕に尺越す猿茸
E07 長き夜や友愛数に首つ丈
E08 銘板を指でなぞるや震災忌
E09 夕暮の日傘に残る日の匂
E10 水音も緑も馳走貴船かな
E11 姉逝きし晨に見つむ鉢の蟻
E12 初蟬を夫逸早く句に詠めと
E13 露の世や戦を仕舞ふ手立て欲し
E14 我が胸に蟬飛び込みて鳴きはじむ
E15 昨夜の雨秋めく朝の風清し
E16 粛粛と時の過ぎゆく晩夏かな
E17 寝入り端の顔をよぎれる稲光
E18 夕靄の山まだ照りて秋暑し
E19 風呂あがり衣一枚蒸し暑し
E20 悔いあれど介護六年鶏頭花
E21 虫の音にしばし佇む草の原