浅川加代子選
平凡といふ幸せを日日草 浜野 明美
追憶は日に日に遠し遠河鹿 水谷 道子
少々と言ひて飲み干す冷酒かな 青木 豊江
夏空を見事にブルーインパルス 寿栄松富美
向日葵に飛び込んでいく三輪車 関口 ふじ
鳴りやまぬ平和の鐘へ大ゆやけ 福原 正司
青芒かきわけ秘密基地へ入る 星私 虎亮
小物買ふ時も離せぬ団扇かな 森田 明男
青空に黒向日葵の神秘かな 山口 直人
老い二人もだして過ごす熱帯夜 伊丹 弘子
三十回目の母の忌日や船祭 井上 妙子
軽やかに持てる令和の扇風機 岡田 潤
アスファルト色に静まる梅雨の街 岡田 寛子
短夜やソファーに眠る夫と猫 加納 聡子
それぞれの思案で揺るる風知草 木村 粂子
片蔭を伝ひつたひて小買物 神出不二子
風涼し嵯峨も奥なる勅願寺 髙松眞知子
裏山は墨絵ぼかしに夕立雲 壷井 貞
落日に頭を垂るる慰霊の日 西山 厚生
小澤 巖選
三輪山の瑞気溢るる新樹かな 髙松美智子
夏風やしやぼんのかをり残す人 竹村とく子
子らの来てぱんぱんになる冷蔵庫 野添 優子
手の汗を拭ひてまはす摩尼車 松井 信弘
夕風や真砂女居さうな麻暖簾 上和田玲子
蟬時雨聞きて精出す庭仕事 平井 高子
涼しさや樫の葉裏へ水陽炎 福原 正司
あと少し炎暑の中の仮住居 森田 明男
立山の風の匂や夏帽子 磯野 洋子
出雲路の列車が分くる青田波 井上 白兎
軽やかに持てる令和の扇風機 岡田 潤
青春を辿る文庫や灯の涼し 加納 聡子
夏帽子深く被りて観劇へ 倉本 明佳
水無月や古古古古米の加減良し 杉本 綾子
老鶯や片側だけの駅ホーム 杉山 昇
ほととぎす締めの一声残し立つ 髙松眞知子
花さびた私雨が峠越ゆ 寺岡 青甫
部屋の灯に藍きらめける江戸切子 中谷 房代
硬膜下血腫全快星今宵 布谷 仁美