青葉・若葉抄 前月号より      原茂美・島津康弘

 

 原  茂美選

冴ゆる道杖突く音の響きけり     土屋 順子
手毬つく大地の声を聞きながら    中田美智子
注連飾る屋根に石置く鶏舎かな    平橋 道子
おだやかに日の差す宮やてまり唄   宮田かず子
絶交と孫の宣言冬うらら       越智 勝利
山茶花の垣根の見ゆる厨窓      日澤 信行
積もれかしと童心騒ぐ夜半の雪    福島 秀行
厳冬の能登いまもなほなゐ止まず   結城 澄子
ゆるぎなく左義長組まれ香の清か   行竹 公子
一木にふくら雀が三十羽       渡邊 房子
日だまりに友の育てし福寿草     秋山富美子
いきいきと老人集ふ寒稽古      天野 秀樹
アイロンを当てて仕上ぐる障子貼り  井上 妙子
蠟梅の香れる庭に深呼吸       大木雄二郎
厳寒に阪神重ね能登思ふ       大前 繁雄
太陽も雲に埋もるる冬の朝      川村 和美
少年の語る決意や息白く       髙松眞知子
目印は軒に下げたる掛大根      谷口智恵己
門口に出でて初日を拝礼す      野田 千恵



 島津 康弘選

唐子絵の湯呑みの藍や初時雨     髙橋美智子
あれも止めこれも略して年用意    瀧本 和子
日々平凡余白の多き日記果つ     平橋 道子
猫の目の中の緑の淑気かな      松本 葉子
野水仙夕日が均す瀬戸の海      隠田恵美子
初春や小さき命愛でて抱く      平井 高子
おとんよりおかんは強し鬼の豆    福島 紫公
楪や夫婦となりて訪ね来る      松谷 忠則
厳寒の駅のベンチの白さかな     山本 創一
初日の出今ある生に手をあはす    天野 秀樹
被災地へ命をつなぐ寒の水      井上 信明
子らと寝て蒲団取り合ふ夜明け方   越智加奈子
正月の凧父と子が糸を繰る      佐々木慶子
ガソリンを満タンにして年迎ふ    関根由美子
寒禽のこゑ透きわたる和上廟     高岡たま子
満席の卓の楽しき大晦日       中谷 房代
主なき生家の手入れ寒に入る     中村 和風
燃えしぶる榾に反古紙を足す朝    野村よし子
検査日の飲まず食はずの寒さかな   井上 妙子